一度しかないと思っていた変態を何度も起こした怒涛の2週間
- 前野圭祐
- 名古屋大学大学院
- 2017春
参加の動機「人生で大きなテーマとしていた『旅』と『ビジネス』」
参加した理由は自分の人生で大きなテーマとしていた「旅」と「ビジネス」、その両方を掛け合わせたものだと思ったので、これは「自分のためにある!」と思い、迷わず応募しました。
この武者修行プログラムが終わって、5月から世界一周に出るつもりだったので、「旅」というテーマは達成されます。一方、当時「ビジネス」というテーマに関しての理想像がぼんやりとしていたため、正直何をやりたいのか自分でもわかっていませんでした。そんな時、武者修行プログラムを知りました。自分の思い描く「ビジネス」を探しにいく、そしてそれを実際に体験できるプログラムは他に見たことがなかったのです。そこで、「ビジネス」という目線で取り組みたいと思い、参加を決意しました。
この時僕はビジネス経験も然ることながら、全然違う部分において「変態」をすることになるなんて思ってもみませんでした。
過去の弱さと向き合うことで見えてきたこと
チームで同じになった2人はどちらも2年生、僕は3つ上。必然的に「自分がしっかりしなくては。」という気持ちを持ったまま、プログラムがはじまりました。
中間発表までの4日間はチームワークがボロボロでした。何もうまく行かず、何も進みませんでした。それを3人とも気づいていながら、なに一つ修正できず、発表を迎えました。撃沈した中間発表を受けて、初めて3人が向き合うことになります。絶好のタイミングで用意されていた中間面談の中で、3人それぞれが自分の本音を話していないという事実に直面しました。「なぜ本音が語れないのか。」ファシリーターの方々の助けを得ながら、僕は、自身の過去に遡りました。辛かったこと、苦しかった過去を引きずり出されていきます。その原因はわかっていました。それを話すのがずっと怖かった。自分でも理解できない涙がただただ流れていきました。気づいたらみんながいる前でむせび泣いていました。
約半年前ある学生団体に所属していたときのこと。それまで本気で意見をぶつけ合ったことがなかった僕は、活動を通して初めて「本気で意見をぶつける」ということに直面し、ひどく戸惑います。勢いで代表になることを志願した僕は、みんなからのプレッシャーと、「まとめなくては」という圧力に押しつぶされてしまいました。ろくに意見も言えず、メンバーの足手まといとなり、しまいには精神を追い込んでしまったのです。引きこもりとなり、結果として、途中でやめることになりました。それをとにかく後悔していました。家の中で引きこもりながら、「このままではいけない。」と決死の思いで応募を決めたのも、実はこの武者修行でした。ここで変わらないとまた同じことを繰り返す。中間面談までの間は、あの時の失敗とまったく同じ局面にあると感じました。自分が変わなければ、状況も変わらない。自分が変わることを決意するとともに、他の2人も反省し、本音を話していくことを決めました。
次の日からは前日までのぎこちない雰囲気が嘘だったみたいに順調に動き出しました。みんなが険悪なムードの中、自分らのチームだけが笑顔で雑談をしている。そんな場面が何度もありました。
それまでは、信頼する、本音を話す、仕事を任せるということができなかったのですが、3人ともが変わろうとした瞬間に簡単にできるようになりました。人間って不思議だなと思いました。本当に、急に、チームの雰囲気が変わったからです。5日目以降、本音を言わなければというプレッシャーも、不快感もなくなったのです。会話も増えました。お互いに気を使わなくなり、仕事に集中できるようになりました。今まで見えていなかった企画の方向性もすんなりと見えてきました。お互いに率先して自分のやれる仕事を能動的に指揮したおかげで仕事を信頼して任せきるということもできるようになりました。
「変態」の意味
僕は「本音を言う」、「信頼する」、「仕事を任せる」という部分において「変態」できたのではないかと思っています。変態するポイントは一つではなく、複数ある。そして武者修行が終わってからも「変態」するタイミングは幾度とくる。そう確信しました。変態というのは広告をクリックさせるキーワードだけではなかった。実際にそれを体験することで、達成感と充実感、成長を実感できます。
最初の4日間は言いたいことが山ほどあるのに言えていなかったため、吐き出すところを求めて、毎日の日記を記す振り返りシートにとにかく思ったことをひたすら書きました。しかし、自分の言いたいことをきちんと言えるようになってから、そのコメントが目減りしました。言いたいことが特になかったのです。なんの文句もなかった。むしろ感謝の言葉ばかり書き込んでいました。
理論だけでなく、実戦で悩みを克服することを経験せざるを得ない環境を与えてくれた武者修行には本当に感謝しています。
同じチームの2人も最初は意見が少なかったですが、意見も言うようになり、自分の良さをみんなの前でも発揮していくようになりました。3人が相乗効果を生んで、3人が合わせて1+1+1=3を超えるパフォーマンスを実現できたと思います。後半から同じ店舗のチームの人とも連携するようになり、より良い効果を発揮し始めました。
あの2週間を振り返って
このプログラムを通して、心に残った四字熟語があります。それは「無我夢中」。
この言葉はよく聞いたことがあるものの、その意味を実際に経験した後に知ると、その深さに圧倒されました。「我を忘れて、他人のために夢中になる。」その我を忘れてという部分が、僕の心に突き刺さり、今も心に残っています。
本当に参加してよかったです。コンプレックスとプライドの塊だった自分がほぐれ、自分らしさを自然に出せるようになったと思います。
これで終わりではなく、僕は生涯をもって自分の伝えたいことを文章や形にして伝えたいと思っていますので、ここで身につけた「自走式エンジン」をそのまま動かし続けてさらなる加速をしていきたいと思います。
僕はこのプログラムが今の日本の大学生がもつべきものを教えてくれ、さらに日本にいるだけでは出し切れていない自分の力を持て余している人たちのニーズを的確に捉えたものだと信じています。僕は、大学生活に物足りなさを感じて何かをしたいと思っていたけれど、何をしたらいいかわからなかった。自分の大切なものを明らかにするための環境を与えてくれた、そんな2週間でした。僕はこのプログラムは日本の大学生が全員やるべきことだと思っています。全国の大学生が武者修行に参加して、一人一人が変態することを願っています!