変態するために必要なもの
- 宇野愛子
- 弘前大学
- 2017春
参加動機 今の私は「私の好きな私」ではない
私は小さいころから、自分のやりたいことはある程度やってきたつもりでした。習い事も進学先の受験も、一度入学した大学を退学してからの今の大学の再受験も、親の反対を押し切って自分で決めました。
でも、やりたいことをやってきたはずなのに、今の大学生活に満足できませんでした。授業とサークル活動とアルバイトで毎日充実しているけれど、このままでいいのだろうか?何かしたいけど何をすればいいのかわからない。こんな毎日を変えたい、自分の本当にやりたいことを見つけたいと思っていた時、フェイスブックで武者修行を見つけました。友達に相談したら、「そのプログラムは厳しいらしいから、中途半端な気持ちならやめた方がいいよ」と言われ、どうしても行きたくなってしまい申し込みをしました。
あと12日
やっとホイアンに着き、初めて会うルームメイトと迎える朝。
初日のキックオフで、初めてタームメンバーとファシリテーターと顔合わせをした日、ファシリテーターの言葉に衝撃を受けました。「みなさんに残された時間はあと12日です。」
待って、まだ始まったばかりなのに…。私の中には、まだまだこれからという甘えがあったのです。今この瞬間に変われなければ、きっとこの先も変われない。これは2週間ずっと心の中にあったことでした。
言いたいことが全然言えていなかったチーム
私たちのチームは他のチームに比べ順調に見えました。大きな対立もなく、思ったことを言い、相手の話を聞くという体制ができていました。そして迎えた中間プレゼン。日本で考えたものとほとんど変わらない企画で、時間の使い方を厳しく注意されました。何より英語が苦手な私にとっては、フィードバックで何を言われているのかわからず質問にも答えられず、すべてチームメイトに任せ通訳してもらう状態でした。
プレゼン後のチーム面談で、ファシリテーターは私たちが話せるようにゆっくりと待ってくれました。そしてチームメイトの一人が泣きながら、「言いたいことも、二人の嫌なところも言えなかった」と言ったのを聞いて、表面上だけ褒め合っている、なんとも気持ちの悪いチームだったことに気付きました。私にとっては、ビジネスを成功させること、優勝することよりも、仲の良いチームでいること、日本に帰ってからも付き合えることの方が大事でした。それは私の過去の体験から来る、本当の気持ちを言ったら嫌われるのではないかという恐怖でした。それを素直に話したらチームの二人は受け止めてくれました。本音を伝えるときは、どうしてそう思うのかその背景までも一緒に伝えるということを学び、ここから本当の意味でのチームとしてスタートしたのだと思います。
とりあえずやってみる、PDCAを回す
私たちはアウトサイドインサイドプロモーションをやっていました。企画が行き詰っていたある時、今までほとんどお客さんが入っていなかった奥まった部屋の机の配置をなんとなく思い付きで変えてみたのです。昼食を食べに行く前のわずか5分の時間でした。そして私たちが帰ってくると、なんとお客さんが二人いました。初めての感情を感じました。これが最初のPDCAが回った瞬間で、その後回し続けることで、お客さんが20人も入るようなリラクゼーションルームをつくることができました。結果、私たちのチームは①店のロゴ・2種類の看板・名刺の制作、②ハンモック・椅子・机の設置、③リラクゼーションルームづくり、と多岐にわたるプロモーションを行いました。それはいつもPで止まってしまいそうになる私に「とりあえずやってみよう」と言い聞かせてくれてたチームメイトのおかげでした。後半になるにつれてそれぞれ別行動になることが多くても、それぞれが自分の仕事を責任をもって行い、離れていてもお互いを信じることができていたからできたのだと思います。
たくさんの「ありがとう」を詰め込んだ最終プレゼン
迎えた最終プレゼンは、私たちが最後の順番でした。休み時間に教室の外で最終確認をしたとき、私にはどうしてもチームメイトに伝えたいことがありました。それは自分たちの企画を話すだけではなく、この2週間お世話になったたくさんの人への感謝を伝えるプレゼンにしたいということでした。チームメイト、ジュースバーで働く人たち、お客さん、タームメンバー、ベトナム人サポーターをはじめとするたくさんのベトナム人…誰か一人でも欠けていたら、私たちの想いは形にならなかった。本番は、ホイアンで出会ったみんなへの感謝を詰め込んだプレゼンができました。私たちの二週間の評価は、すべての企画が継続。そして優勝でした。泣いて喜ぶチームメンバーを見て、いつの日か本気で優勝したいと思っていた自分自身に気が付きました。二人と一緒だったからここまでこれた、心からこのチームでよかったと思えた瞬間でした。最初はすべての行動が「自分のため」だった私が、お客さんのために、お店のために、チームのために、タームのために、私と関わってくれたみんなのために行動できるようになっていました。その中で、誰かに向き合うことは自分自身に向き合うことだと気付き、誰かが笑顔になることがこんなにも嬉しいのだということを、11タームのみんなは私に教えてくれたのでした。
変態は甘くない
私は一つ大きな勘違いをしていました。それは、武者修行に参加したら、自分も変われるということです。参加した今、「プログラムに参加しただけで誰でも変われるわけではない」ということがわかります。「本気で変態したいと思い、本気で行動した人だけが変態できる」のです。途中までの私は、周りに甘え、行動しない言い訳をし、本気になることから逃げていました。そんな私でも本気になり変態できたのは、一人じゃなかったからです。人生が変わるきっかけをもらい、自分の意志で自分の人生を生きようと決意することができました。
ここには変態するための最高の環境が整っています。あとはあなた次第。一歩踏み出した先の世界は驚くほど違いますよ。