自分の気持ちを尊重する大切さ
- 島上佳南子
- 慶応義塾大学
- 2016年春
大学生活に目標が欲しい
大学二年生に進級したころ、私は自分自身の大学生活の過ごし方に疑問を持ち始めました。
それまではサークル、バイト、飲み会を繰り返しでスケジュールが埋まることに満足していましたが、
このままのスタイルで学生生活を送っていいのだろうか?
と常々感じるようになったのです。それでも、私はその思いを心の奥に押しやって見て見ぬふりをしていました。
しかし、二年生の秋ごろから自分の中でそういった思いがどんどん膨らみ、いつしか「目標が欲しい」と感じるようになりました。
将来の夢でも資格でもなんでもいいから、目指すべき目標が欲しい。
そう思い焦り始めた私は、大手企業のインターンシップに参加したりOB訪問するなどして目標を探し始めましたが、「こうなりたい!」と強く思える具体的なゴールは見つかりませんでした。
少しでも気になるイベントやインターンにはなるべく参加しようと行動していたものの、「こんな方法で目標探しすることに意味があるのだろうか」と自分の行動に自信が持てませんでした。
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私の2週間でのチャレンジ
私たち三人チームは、ハンバーガーショップのプロモーションチームでした。お店の宣伝方法を考案し、実行するビジネスです。
普段話し合いなどでどうしても聞き手にまわってしまいがちな私は、「ビジネスするからには」と思い、渡航前のスカイプ会議やベトナムに移ってからも、なるべく「何か言おう」と思い発言を積極的にしていました。
しかし、発言しても相手のリアクションが薄いと少々いらだってしまい、そしてそのいらだちはチームメイトに伝染するので、チーム内の雰囲気はよくありませんでした。この頃、私たちは全く心の距離を詰められていなかったのです。
「ビジネスする際はまず仲良くなることが大事」と言われてはいたものの、仲良くなる方法がわかりませんでした。議論が煮詰まって雰囲気が悪くなったときに私がしたことと言えば、黙り込むことくらいでした。「もういいや」「これ意味あるの?」というマイナスな感情が生まれ、投げやりになっていたのです。
チームメイトに苛立つだけで、何もチームに貢献できていない自分が本当に情けなく思えて、何度か涙しました。
「困難な状況に陥ると投げやりになり、他人任せにする」という自分自身の短所を、現実がはっきりと突き付けてきたのです。
同時に、「チームでビジネスを成し遂げたい」という自分自身の気持ちに見て見ぬふりをしていることにも気づきました。
そのため、もっとチームメイトの意見や思いを知りたい、という姿勢を前面に押し出す努力を始めました。相手が心を開くのを待っているのでは意味がない。自分自身が心を開かなければいけないんだと、やっと気づいたのです。
「よりよい関係性を目指して自らアクションを起こすこと」が私の武者修行プログラムでのチャレンジでした。
得られた二つの変化
ひとつ目の変化は、私たちのチームの議論が驚くほど変わったことです。
「○○はどう思う?」と積極的に尋ね、三人ともお互いの意見に真摯に耳を傾け、チーム内の雰囲気は日を重ねるごとに明るくなりました。
建設的な議論を重ねられるようになると、いつしか自分たちの企画にも自信を持てるようになりました。
例えば「店の駐輪場を作る」という案は、「欧米人観光客はバイクや自転車でビーチにやってくる・周囲の飲食店はほぼ駐輪場をもっている」という事実に基づき、「駐輪場を作れば利用客数が増えるのでは」という解釈から、人目に付くキャッチフレーズを書いた横断幕と共に実行されました。また、店のキャパシティを増やし、見た目もより店らしくなるようにとテラス席を増やしました。
こうして、顧客のニーズを常に意識し、自分たちがやりたいと思う企画を進めていったのです。その結果、企画は私たちの帰国後も継続することに決定しました。
大したことないようなビジネスに思えるかもしれませんが、仮説と検証を繰り返し出来上がった自慢の企画そのものです。
ふたつ目の変化は、チームメイトに対する私自身の思いです。
彼らにぜひ仕事を任せたい、という信頼が生まれたのです。以前は三人で行動することをつらいと感じていましたが、企画成立時にはチームで過ごすことを楽しいと感じるようになっていました。こうして、ベトナムで過ごした二週間で二つの大きな変化を体感することができました。
自分の何かを変えたい、その気持ちを何より大事にすること
目標が欲しい、自分を変えたいという意識のもとベトナムにやってきましたが、具体的な目標は結局見つかりませんでした。
ただ、チームメイトとのビジネスを通じて、自分自身の気持ちに目を背けず、尊重することの大切さを学ぶことができました。武者修行に参加する以前は自分の「目標探し」の方法に自信は持てませんでしたが、自分を信じて、焦らず、いろいろなこと・ものをこの目で見たいと強く思えるようになりました。
自分の何かを変えたい、と心のどこかで少しでも感じている方がいらっしゃったら、その気持ちを何より大事にしていただきたいと思います。
もちろん、知らないことに挑戦するには勇気が必要ですが、自分を変えるためのチャンスや方法は意外と周りに散らばっています。
武者修行プログラムもその一つなので、ぜひチャレンジしていただきたいです。