質の良い議論をするために
- 北村文香
- 北海道大学
- 2021春
武者修行で学んだこと
チームで良いものを作るために必要なものを学んだ。それは”議論”の前に”会話”と”対話”が必要だということだ。
私たち3人のチームが挑戦したのは商品開発。企画から販売までを2週間という短い期間で行う。そのため、私はビジネスの”議論”を早く進めなければ、とかなり焦っていた。良い商品を作るために何度も仮説検証し、さらに販売のための準備を進め、プレゼンもしなければいけなかったからだ。その焦りに加え、私は自分の意見を伝えるのが苦手だったため、チームメイトの本音や深い部分を知ろうとせず、さらに自分の本音を伝えなかった。つまり、”対話”ができていなかったのだ。
私たちのチームは仲が良く、”会話”はよくしていた。しかし、議論では苦労を味わう。「良い商品を作るためにはもっと積極的に意見を言ってほしい」や、「意見を言った時に初めから否定しないでほしい」という本音を私は持っていた。そのため、議論を前に進めるために工夫した。発言が少ないチームメイトには一番最初に話を振る、積極的に指名して意見を聞くなど。さらに否定的な発言が多い場合には、「じゃあこれを解決するにはどうしようね」と未来に向けて問いかけをしてみた。しかし、これは表面的な解決策だった。
対話の本質
本音を伝えられないまま最終プレゼンが終わり、結果は不採用。私はこのモヤモヤした気持ちを持ってプログラムを終えたくないと思った。さらに私の苦手とする、自分の意見を相手に伝える、というチャレンジを最後にしたいと思った。そこでチーム3人で集まり、自分の想いをぶつけた。すると想像もしなかった返事が返ってきた。「人に頼るのが苦手だから、プログラム中は人に頼ろうと思っていた」である。そんな風に考えているなんて知らなかった。チームメイトは他のチームメンバーを頼っていたのに、私はどうにかして意見を引き出そうとしていたのだ。同じ事実に対してお互いの認識にズレが生じていたために、誤った手段で解決しようとしていた。その時、「表面的に見えている行動からは真意が分からない。これではチームで最大のアウトプットを出すために本質的な解決ができるわけがなかった。」と気づいた。
「どうして相手は意見を積極的に言わないのだろう」や、「どうして意見をいう時に初めから否定するのか」とチームメンバーの前提や考え方の違いを分かりあおうとすべきだったのだ。つまり、「どうしてそう思っているのか」、「どうしてその行動をとるのか」それをすり合わせる”対話”ができなかったから”議論”が進まなかったのだ。
お互いに本音で話し合うことで、チームの雰囲気が変わった。安心して自分の意見を言えるようになったのだ。この”対話”ができたのは、普段から”会話”をしていたから。そして”対話”をすることで、おそらく”議論”は良いものになっていただろう。私たちのチームはそれに気づくのが遅かった。しかし、武者修行は人生の新しいスタートである。今後の人生で今回の学びを生かしていこうと思う。